ゴスペラーズ「ひとり」の最初の3秒の魅力について検証してみた。
こんばんは。細井涼介です。
今日はタイトルの通り、ゴスペラーズさんの名曲「ひとり」の最初の3秒の魅力について検証してみることにします。
僭越ですが、いちアカペラ好きとして、自分が長年愛している楽曲の魅力に真摯に向き合って参りたいと思います。
冒頭の「愛してるー(コーラス:ウー)」のところ、20年近く何回も何回も聴いても新鮮にキュンとくるな。すごいぜ。
— 細井 涼介@アカペラ研究室「LET'S A CAPPELLA AGAIN」 (@ryosk_h) 2020年10月23日
ちょっと理由を考えてみよう。
ゴスペラーズ - ひとり / THE FIRST TAKE https://t.co/BYSM8jqWFw @YouTubeより
上記のツイートのように、The Gospellersさんの「ひとり」(THE FIRST TAKE Ver)を聴いて、20年近く何度も聴いてるのに本当にびっくりするほど新鮮にキュンときて、理由を考えてみた次第です。
まずは検証のきっかけに動画(名演)から。
ゴスペラーズ - ひとり / THE FIRST TAKE
肉厚でジューシーなアカペラで、歌力がすごいですね。
2001年3月7日に発売されて20年近く経った今も、曲も歌も輝き続けている。
一般的にその時代に流行っている音色やミックスバランス(作品の音のバランス)を積極的に取り込んで行った場合、曲の良し悪しに関わらず10-20年と経つと、少し前の音と感じられがちです。
しかしアカペラは、特にボイパを使わないアカペラは、そういった時の試練の影響を初めから受けづらいように思います(リズムトラックがなく、帯域も人の声だけで最初から限られているので)。
続いて楽譜を見てみましょう。
今回は最初の3秒の検証なので、本当に冒頭のみですw
(Top、2nd、3rdにオクターブ下げる記号つけておらずすみません!)
この一瞬、時間にしてたった2-3秒の瞬間に、何回聴いても「キュン」と来る音の魔法的要素があると思うのです。
なぜか考えてみます。
<リードボーカル / メロディー編>
1、「愛してる」の歌い出しが「あ」の母音でスタート。広い母音で歌が強く出る。インパクト大。
→ヒットソングの要所(歌出し、サビ頭)は「あ」母音スタートが多いの法則。「ひとり」も歌い出し、サビどちらも「あ」の母音ですね。
2、歌い出し「あい」は「F#」で、リードボーカルの村上てつやさんの非常にパワフルな声が響く高さの音。
3、リードボーカルの「愛してる」の「る」は、コーラスの「ウー」と同じ母音。
→リードボーカルとコーラス、全員が要所で母音が揃うことで、全体の一体感が出る。
4、「愛してる」は移動ドで「ミレドド(曲のキーではファ#ミレレ)」で、「る」は曲の主音(ド)に着地。
→体感としてメロディーの要所に主音(ド)が来るとメロディーに特有の強さが出ます。
5、「愛してる」の「る」がビブラートで揺らいでる。
→原曲もTHE FIRST TAKE Verもリードボーカルの村上てつやさんの歌がビブラートで揺らいでる点も、冒頭3秒の大事なキュンポイントとして決して見逃せません。
<コーラス編>
1、ベース(レ)と3rd(ラ)が5度の関係で重厚な鳴りを確保。
→一般的に5度は力強い重厚な鳴りになります。
2、一番目立つトップコーラスに長3度(F#)を配置。
→一般的に3度は最もハモってる感が強い音。そしてリードボーカルの「愛してる」の「る(レ)」に対しても、長3度(F#)で抜群のハモリ感。
3、「ウー」コーラスの「う」母音の持つカタマリ感と密度の高さ。
4、原曲もTHE FIRST TAKE Verもトップコーラスの黒沢薫さんが長3度をかなりしっかりしゃくっていて、コーラスの全体像がとてもかっこよく聴こえる。他パートもしゃくっているパートがありますが、トップは特に顕著。トップの長3度が低いところからしゃくって入ると、ブルージーなフレーバーが漂うから独特な色気が出ているのではと予想します。ここは「ひとり」の最初の3秒のキュン感への影響がとても大きいと感じます。
5、3和音(下からレ-ラ-レ-ファ#)である。
→シンプルで強いハーモニー。歌の味付けの許容度も4和音以上の和音に比べて大きい。ちなみにこの歌い出しの和音にミ(add9th)やド#(メジャー7th)を入れるとそれはそれで楽しいのですが、全然違う世界観になりますね(以前よくみんなで遊んでいた)。
<検証の感想>
以下がとても大事だと改めて痛感しました。
1、リードボーカルもコーラスも、どこでどの母音を選ぶかが大事。要所でリードボーカルとコーラスで母音を揃えるかどうかも大切な要素。
→母音によってだいぶコーラスのカラーや効果が異なる。
2、どこでどのボイシング(音の積み方)を選ぶか。
-特にリードボーカルとトップコーラスがどんな音程関係かは影響が大きいと改めて感じました。歌い出し、サビ頭、曲の終わりなど要所は特に。「ひとり」の歌い出しはリードボーカルとトップコーラスの音程関係が長3度であることが、キュンとくる感の理由としてものすごく大きい。
-5度の鳴りはやっぱり重厚で強い。長3度はハモリ感がとても強い。
3、ポップミュージックは最初の一瞬がとても大切。ゴスペラーズさんの「ひとり」は最初の2-3秒でものすごくアトラクトされます。そこで最初の勝負が決まっているし、何回聴き返してもその最初の一瞬の魅力でまた新鮮に虜になります。
以上、僭越ながらゴスペラーズさんの「ひとり」の最初の3秒の魅力について検証してみました。
THE FIRST TAKEの動画を見て、突然考えて、それをまとめてみたくなった衝動的なやつですw
ずっと好きな曲をこうして言葉にしてみるのは楽しい作業ですね。
同時にとても大切なのは、音楽の魅力を言葉にする努力と、言葉に出来ない音楽の魅力が存在することを謙虚に理解することなんだと思います。
長文、読んでくださってありがとうございました!
この曲の歌い出しの魅力が最高な理由、他に思いついた人がいたらぜひ教えてください!
アカペラ研究室「LET'S A CAPPELLA AGAIN」、最近作品発表がお留守になっていますが、必ずパワーアップして復活させますので、そちらもよろしくお願い致します!