細井涼介/アカペラ研究室「LET'S A CAPPELLA AGAIN」の研究日誌

アカペラ研究室「LET'S A CAPPELLA AGAIN」。研究室長の細井涼介が日々の研究を綴ります。

「RAG FAIRの音楽室7」にゲスト出演した時に感じたことを詳細に記録します。

こんばんは。細井です。

2021年5月7日(金)に配信された「RAG FAIRの音楽室7」にゲスト出演して参りました。

l-tike.com

※2021年5月10日21:30までチケット購入可能、23:59まで視聴可能です!

まだ見てなくて、興味ある方ぜひご覧ください!

 

以下公式の紹介文です。

「前回前々回とパーカッション、ベースの対決が続いたが、今回の音楽室シリーズ第7弾は、ついにボーカル陣が対決に巻き込まれる。その相手はボーカロイド!果たして一緒に演奏できるのか。」

 

僕はボーカロイドたちの引率者的な役割です。

具体的にはボーカロイドの歌うデータを事前に作って、本番で流したり、説明をしたりすることです。

 

とても嬉しく、僕にとって大事な出来事だったので、詳細に記録に残しておきます。

学んだことの多さと感激の分だけ長くなることをお許しください。

 

 

<今回の内容>

・「RAG FAIRの音楽室7」に参加することになった経緯

・参加した楽曲について(曲やボカロの観点)

・リハーサルや本番で細井が目撃したRAG FAIRさんのアカペラの魅力

 

このブログをわざわざ見に来てくれる方はマニアが多いと思うので、詳しく書くことを恐れずに行きますw

 

 

・「RAG FAIRの音楽室7」に参加する経緯。

きっかけは引地洋輔さんから頂いたTwitterでのDMでした。

youtu.be

ボーカロイドに詳しい人を探していらっしゃるご様子。

僕が以前ハマって作っていたボーカロイドによるアカペラ、ボカロアカペラを見て頂きました。

そして「RAG FAIRの音楽室7」にお誘い頂きました。

人生何がきっかけになるか分かりません。

 

 

・参加した楽曲について。

今回は以下の2曲、参加させて頂きました。

1、「tea time lover」

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(2003年1月22日発売「AIR」の4曲目/作詞・作曲:土屋礼央さん)

→こちらは2バージョン。1つはボカロ紹介として、ボカロのみで演奏したバージョン。もう1つはボカロが1パート(2ndコーラス)だけRAG FAIRさんのアカペラに混じらせて頂くバージョン。聴いてる方にそれが分かるのか、クイズのような企画でした。

 

2、「白い天使が降りてくる

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(2003年11月12日発売のシングル表題曲/作詞:加納孝政さん・ 作曲 : 櫻井真一さん)

 

どちらも僕自身が中高生の頃に大好きで聴きこんでいた作品。

自ずと力が入ります。

早速僕が思う楽曲の魅力と、ボカロを作るときに考えたことを書いていきます。

 

 

1、「tea time lover」/ボカロオンリーVer

この曲は中高生の頃に理由も分からず好きだった曲です(大事)。

大人になってから改めて向き合うと、随所にJAZZのヴァイブスがちりばめられ、それがRAG FAIR流のポップなコーラスワークと絶妙なバランスで成り立っていて、キャッチーで好きになったことが分かりました。

 

今回はボカロ紹介として歌はボカロのみで、サビと間奏のみのショートサイズを作りました。

サビは原曲のアレンジに忠実に作りました。

間奏はボカロならではの面白さ(高速で変態なフレーズも打ち込めば演奏可能)を出すため、かなりトリッキーなコーラスワークにしました。

間奏では原曲にあるJAZZの風味をさらに全面に押し出したいとも思いました。

具体的には原曲にあるジャジーなかっこいいフレーズをメインにして、6声の変態的な和音をメロディーの1音ずつ全てに個別につけていく手法です。

ボイパはサビ本編は細井のボイパをサンプリングして、打ち込んだものです。タイトでキャッチーなリズムが欲しかったので、サンプリング→打ち込みの手法にしました。

間奏のボイパはJAZZのスウィングと躍動感がほしく、打ち込みではなく、生演奏のボイパです。

 

2、「tea time lover」/どこのパートをボカロが歌ってるかクイズ企画

僭越ながら2ndパートを担当する荒井健一さんと、ボーカロイドが交互に歌うもの。

 

大事にしたのは以下の点です。

・どうやったら聴いてる人にバレずにw、RAG FAIRさんのコーラスワークに混じれるか。

・音の長さやキレ感をRAG FAIRさんのコーラスワークに可能な限りしっかり寄り添いに行く。音の長さは一体感の大事なポイントになるからです。

・この曲の速いテンポにおいてはゆっくりで大きなビブラートよりも、小さくて速いビブラートのが合うので、それを基軸にする。

・以前人間アカペラを作っている時、「ウー」「アー」みたいなロングトーンは初めからビブラートがかかるより、最初はストレートで伸ばして、語尾だけビブラートで揺らす手法が有効と発見したので、それを活用。こうすることで和音の鳴りの良さと歌のフレージングのかっこよさが両立できる。

 

 

この曲で発見して感激したのは以下の点です。

・この曲は「シュビドゥワパッパッパ」的なスキャットが基軸になっています。

これはいかにもボーカロイドの英語キャラが「Shoo Bi Doo Wop」と歌うのが合いそうなもの。しかし実際には日本語のキャラが日本語で「シュビドゥワパッパッパ」と歌ったほうが断然ハマりが良かったんです。

僕個人の感覚なのですが、こうした日本人が聴いてすっと入ってくるスキャットワーク、これがRAG FAIRさんのアカペラのキャッチーさや、僕らが魅了される理由の一つなんじゃないかと想像されて、感激したんです。

 

 

3、「白い天使が降りてくる

こちらは原曲がかなりのパート数、テイク数ダビングされた名作。

メインボーカルや人間らしさがより活きるコーラスパートはRAG FAIRさんによる生歌での演奏。

それ以外のダビングされた部分をボーカロイドが担います。

 

この曲本当に好きなんです。

この曲は現代にも影響を与え続ける1963年発売の不朽の名作、「A Christmas Gift for You from Phil Spector」のエッセンスや景色を継承して、2003年の現代アカペラにアップデートされた名作だと僕は思っています。

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上記のアルバムを作ったフィル・スペクターさんのサウンドは「ウォール・オブ・サウンド音の壁)」と評されましたが、この曲は声を大量にダビングしまくることで、人の声、アカペラで、「音の壁」を表現した由緒正しい名作と思うのです。

 

この曲はtea time loverとは逆のアプローチで、ボカロの英語キャラたちの歌がピタリとハマリました。

これはコーラスフレーズに英語が多いのと、リズムをしっかり打ち出すために子音の強さが大事なので、子音が強い言語である英語のキャラがハマったではないかと予想します。

3連のリズムが心地いい曲なので、そのグルーヴ感をしっかりボカロで打ち出せるように心がけました。

この曲は本番、特にイントロから感動しました。

RAG FAIRさんがイントロを歌いだしたとたんに現場にクリスマスの空気が流れたんです。

クリスマスから遠い遠い春の日にです。

歌の魅力、曲の魅力、アレンジの魅力、全てが良い形で組み合わさると目の前の現実にない世界を生み出せる音楽ならではの力を目の当たりにしました。

好きな曲だったので、この曲をご一緒出来たのは本当に嬉しかったです。

 

 

・リハーサルや本番で細井が目撃したRAG FAIRさんのアカペラの魅力

アカペラと音楽の大先輩に対して僕がこれを書くことは、すごく僭越です。

ですが、こんな貴重な体験はないので、僕が見て感じたことを言語化して記録しておくことが大事だと思いました。

なので恐縮ながら、書きます。

 

1、異なる個性を持ったカラフルなコーラスワーク。聴いてる人に届くようにと熱量高く歌うコーラスワーク。

加藤慶之さんのコーラスは美しく、大きい声を出す力感がまるでないのに豊かにリッチに声が鳴っていて、驚きました。これ説明が難しいのですが、本当にビックリしたんです。自分の耳と音の発信地である加藤さんの距離感で聴こえてくる音が普段体感しない感じだったんですよね。なので、「え?うそでしょ?」って自分と音の発信地である加藤さんのポジショニングを確認しては驚いてました。一度ではなく、何度も新鮮に驚きました。

荒井健一さんは声のカラーが独特で素晴らしかったです。僕が好きな「白い天使が降りてくる」のイントロが持ってるあの独特なカラーや世界観は、荒井さんの独特な声質そのものが大きな影響を与えていたのだと分かりました。別の声だったらあの色合いは出ないと思います。声のパワーの影響は大きいんだと改めて実感しました。

引地洋輔さんは正確な音を大きな声でしっかりはっきり安定供給していらっしゃる方で、RAG FAIRさんのコーラスを低音部から支え続けていることが改めて分かりました。アカペラは楽器がないので、正しい音をしっかりはっきり出してくださる方の存在は本当に心強く、価値が高く、かけがえのないものなんですよね。

 

そしてRAG FAIRさん全体のアカペラのアンサンブルは「聴いてる人に届くようなパワーのある歌う」というまるで集合意思を持っているかのように聴こえました。

 

 

2、土屋礼央さんの存在。

これはものすごくいい意味で、土屋礼央さんは例えばアカペラサークルのようなコミュニティーにはいなそうな方でした。

最近衝撃を受けた本で、木崎 賢治さんの「プロデュースの基本」という本があります。

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ここに書かれていたのは、音楽プロデュースで大切なのは、異なる要素、真逆の要素をミックスすること。

その異なる要素の距離が離れているほどに面白く、聴く人の層が広がっていく可能性が高まるということでした(細井読後解釈)。

例えばブルースのシンガーがブルースの曲を歌うのは別に良いことだけど、ある程度予想通りのものになる。

ブルースのシンガーがポップな曲を歌ったらいい意味でのギャップが生まれるかもしれないし、ブルース好きな人にもポップス好きな人にも届いて、聴いてくれる人の層が広がるかもしれないとのこと。

上記の内容を読んで感銘を受けた直後でしたので、土屋礼央さんという、アカペラの一般的なイメージと異なる個性を持った方がいらっしゃることが、RAG FAIRさんを好きになる人の層を広げて、より広く愛されることに繋がったスーパーファインプレーだったのではないかと思いました。

 

 

3、聴く人が楽しめることを大切にしていること。

プロがリハーサルをする時、より良いものを目指してコミュニケーションやアイディア交換が行われます。

RAG FAIRさんのリハーサルでは「どうやったら見てる人が楽しんでくれるか」という観点を大事にされてるように僕には見えました。

具体的には「きてよパーマン」のスキャットを、「こうやったらもっと面白くなるんじゃない?」って、ものすごくこだわっていらっしゃったんです。

僕なんかはアカペラ制作の時に本当に重箱の隅の細かいところに意識のかなりの部分を持っていかれているので、こういった伝えること、聴いてる人が楽しめるような音楽を作るRAG FAIRさんの姿勢はものすごく勉強になりました。

 

 

こうして書いた1つ1つが、RAG FAIRさんが長年愛されている理由だと感じました。

本当に僭越なのですが、ここは素直に正直に、感じたことをありのままに書かせて頂きました。

 

最後に、これもどうしても書きたいがあります。

僕の出演分が終わった後に、残っていた部分のリハや本番撮影を見学していっても良いかお尋ねした時、快くOKしてくださったんです。

発見や勉強になることがたくさんありました。

本当にありがとうございました。

 

「RAG FAIRの音楽室7」という素晴らしい配信番組に参加させて頂きまして、とても光栄でした。

RAG FAIRのメンバーの皆さまに心より感謝申し上げます。

ありがとうございました。